月曜日恒例の社長ブログです。
今日は、3月11日が近づくこの時期だからこそ、改めて「BCP」について考えてみたい。
少し前の2026年1月6日10時18分頃、島根県東部を震源とする地震が発生した。気象庁によると、この地震はマグニチュード6.2、最大震度5強を観測し、緊急地震速報も発表された。さらに、鳥取県西部では長周期地震動階級4が観測され、緊急地震速報の予報対象には岡山県北部・岡山県南部も含まれていた。
そのとき、私たちは緊急地震速報を耳にしながら、十分な安全行動を取ることができなかった。
「震源は少し離れているから大丈夫だろう」
どこかでそんな感覚が先に立ち、初動が遅れた。だが、もしこれが南海トラフ地震だったらどうだろうか。そう考えたとき、あのときの対応を“仕方なかった”で済ませてはいけないと強く感じた。
今日は、あの日の反省をもとに、当社がBCPをどう見直していくべきかを書いていきたい。

2026年1月6日の島根県東部地震で突きつけられた現実。緊急地震速報が鳴っても動けなかった
BCPとは、事業継続計画のことだ。
災害や緊急事態が起きても、会社として重要な機能を止めず、できるだけ早く立て直すための備えである。
言葉としては多くの会社が知っている。
当社でも、BCPの必要性は以前から意識してきた。
だが、今回の地震で痛感したのは、知っていることと、実際に動けることはまったく別だということだった。
緊急地震速報が鳴ったとき、本来であれば最優先すべきは安全行動だったはずだ。
まず身を守る。周囲の状況を確認する。社員の安全を確認する。必要なら業務を止める。
少なくとも、その方向に会社全体の意識が一気に切り替わらなければならなかった。
しかし現実には、そこまで切り替わらなかった。
普段の延長線上で動いてしまった。
「少し遠い場所の地震だから」「ここはそこまで大きく揺れていないから」という感覚が先に立ち、危機対応の初動が曖昧になった。
これは、誰か一人の問題ではない。
会社として、緊急地震速報が鳴った瞬間に自動的に安全行動へ移るところまで、BCPが落とし込めていなかったということだ。
書類としての計画はあっても、行動としての備えにはなっていなかった。
今回の出来事は、そのことを非常に分かりやすく突きつけてきた。

「遠いから大丈夫」という判断が危ない。南海トラフ地震を自分ごとにする
今回の反省で特に大きかったのは、「遠いから大丈夫」という感覚の危うさだ。
震源が島根県東部で、岡山から見れば少し離れている。
その距離感が、無意識のうちに安心材料になってしまった。
だが、災害時に最も怖いのは、こうした“自分に都合のよい判断”だと思う。
大きな災害ほど、人は「まだ大丈夫」「自分たちはそこまで影響を受けない」と考えたくなる。
だが、それこそが初動を遅らせる。
本当に危険なのは、地震そのものだけではなく、危険を危険として受け止めきれない側の意識である。
気象庁の緊急地震速報の予報対象には、岡山県北部だけでなく岡山県南部も含まれていた。つまり、今回の出来事は決して“完全に他所の話”ではなかった。
まして、南海トラフ地震のような大規模災害を考えたとき、「震源がどこか」だけで安心していては意味がない。
道路は止まるかもしれない。物流は乱れるかもしれない。通信も不安定になるかもしれない。
お客様も、仕入先も、社員の家族も、いつも通りではいられない可能性が高い。
当社はねじを扱う会社であり、供給を止めないことに責任を持っている。
だからこそ、災害時に必要なのは「近いか遠いか」の感覚ではなく、どんな状況でもまず安全を確保し、その上で会社として次の行動に移るという基本を徹底することだ。
今回の地震は、その当たり前をもう一度見直せという警鐘だったのだと思う。

営業中の社員の安否確認ができなかった。課題は計画不足ではなく実行不足
今回、もう一つ大きな課題として浮かび上がったのが、営業で外に出ている社員への対応だった。
安否確認については、頭の中ではある程度想定していたつもりだった。
だが、実際に緊急地震速報が鳴ったとき、その想定はほとんど機能しなかった。
誰が確認するのか。
どの順番で連絡するのか。
電話がつながらない場合はどうするのか。
本人はまず何を優先するのか。
安全確保のあと、どこへ連絡するのか。
会社にいる側は、その情報をどこに集約するのか。
こうしたことが、実際の行動レベルでは曖昧だった。
つまり、想定はしていたが、運用できる形にはなっていなかったということだ。
災害時に必要なのは、立派なマニュアルではない。
誰が見ても分かること、誰でも同じように動けること、迷わず実行できること。
そこまで具体化されて、初めて備えになる。
安否確認は単なる連絡業務ではない。
社員の命に関わることであり、その後の会社の判断すべての起点になる。
誰が無事で、誰が移動中で、誰と連絡が取れていないのか。
それが分からなければ、業務継続も、お客様対応も、次の判断もできない。
BCPは、会社を守る計画である前に、人を守る仕組みでなければならない。
今回の反省を通じて、その原点をもう一度はっきり認識した。

3.11を前に見直したいBCP訓練。安全行動と初動対応を徹底する
3月11日が近づくこの時期、私たちは毎年、防災やBCPについて考える。
それ自体はとても大切なことだ。
だが、本当に大事なのは“考えた気になること”ではなく、“行動できる状態にすること”だ。
今年のBCP訓練では、今回の島根県東部地震の反省をきちんと材料にしたいと思っている。
実際に緊急地震速報が鳴ったとき、どう動くべきだったのか。
どこで判断が甘くなったのか。
営業で外にいる社員との連絡は、どうすればもっと確実にできたのか。
社内にいる社員は、何を優先すべきだったのか。
そうしたことを、きれいごとではなく、実際の出来事に基づいて見直していくつもりだ。
訓練というと、どうしても形だけになりやすい。
だが、訓練は“やったこと”を残すためにあるのではなく、“本番で動けるようにする”ためにある。
だからこそ、今回の反省は非常に価値がある。
うまくできなかったからこそ、見直すべき点が明確になった。
たとえば、緊急地震速報が鳴ったらまず何をするのか。
机の下に入るのか、頭を守るのか、火元を確認するのか、業務を止めるのか。
その後、誰が誰の安否を確認し、どこへ報告するのか。
外出中の社員は、まず身の安全を確保したうえで、どの手段で状況を伝えるのか。
そこまで具体的にしなければ、次の地震でも同じことが起きる。
BCPは、一度つくって終わりではない。
実際の出来事で揺さぶられ、そのたびに見直し、磨き上げていくものだ。
そう考えると、今回の反省は、当社にとって非常に重要な学びだったと思う。

会社を守るために、まず人を守る。BCPを“できること”に変えていく
会社は、建物や設備だけで成り立っているわけではない。
そこで働く人がいて、取引先がいて、お客様がいて、初めて成り立っている。
だから災害時に最優先すべきことは、やはり人の安全である。
安全行動を取る。
社員の無事を確認する。
落ち着いて情報を集める。
その上で、どの業務を止め、どの業務を続けるのかを判断する。
この順番を、会社として徹底しなければならない。
今回の島根県東部地震では、緊急地震速報が鳴ったにもかかわらず、私たちは十分に動けなかった。
それは悔しい反省である一方で、今のままでは足りないことを現実として教えてくれた出来事でもあった。
3.11を前に、災害の記憶を風化させないことはもちろん大切だ。
だが、それ以上に大切なのは、その教訓を自社の行動にまで落とし込むことだと思う。
「知っている」ではなく、「できる」。
「想定している」ではなく、「動ける」。
そこまでいって、初めてBCPは意味を持つ。
当社はこれからも、ねじの供給を止めない会社でありたいと思っている。
だが、その前提として、社員の安全を守れる会社でなければならない。
今回の反省を無駄にせず、BCPを書類ではなく行動に変えていく。
3月11日を前に、そんな決意を新たにしている。

【写真⑥:社員集合、朝礼、防災備蓄、会社の外観、未来志向のイメージ写真など】
