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経営理念と使命、どちらが重要か? ドラッカーと考える「会社の魂」の在り処と、私たちが「3つの幸せ」を最上位に置く理由

月曜日恒例の社長ブログです。

現在、私は中小企業家同友会が主催する「経営指針成文化研修」というものに参加しています。全国の経営者が集い、自社の経営の軸を確立するために、自社と徹底的に向き合う、非常に密度の濃い学びの場です。

この研修の核となる作業が、「経営理念」を成文化することです。

しかし、この作業を進める中で、私はある種の「嬉しい混乱」に直面しました。それは、同友会で語られる「経営理念」の定義と、私たち三協鋲螺が大切にしてきた「経営理念」と「使命」の関係性に、一見すると「ズレ」があるように感じられたからです。

今日は、この「ズレ」を解き明かすプロセスこそが、私たちの会社の「魂」の在り処を再確認する絶好の機会だと考え、筆を執りました。なぜ私たちは「経営理念」を「使命」の上に置くのか。この構造に込められた、私たちの経営の根幹についてお話ししたいと思います。

目次

「経営理念」の定義に悩む。同友会での学びと、私たちが大切にしてきたものの「ズレ」

まず、この「ズレ」について説明させてください。

同友会の研修では、「経営指針」の構成要素として「経営理念・10年ビジョン・経営方針・経営計画」を策定します 。この文脈における「経営理念」は、会社の存在意義や社会的使命感といった、「会社が何のために存在するのか」という根源的な目的を指すものとして議論されます。

これに触れたとき、私はすぐに自社で「経営計画書」と呼んでいる、経営の設計図に立ち返りました。

私たちの経営計画書では、その構造が明確に定義されています。

  • 経営理念:
    • 「社員の幸せ」「お客様の幸せ」「会社の幸せ」
      これら「3つの幸せ」が一致するような経営を行い、広く社会に奉仕・貢献する。
  • 使命 (ミッション):
    • あらゆるものを繋ぎ、世のため・人のため・地域へ貢献する。

お分かりでしょうか?

同友会でいう「経営理念」(=社会的な存在意義・目的)は、私たちが「使命 (ミッション)」と呼んでいるものに非常に近いのです。

一方で、私たちが「経営理念」と呼ぶものは、私たちが最も大切にする「価値観」であり、「信念」そのものです。

そして最も重要な点は、私たちのモデルでは、この「経営理念 (3つの幸せ)」が、「使命 (つなぐこと)」よりも上位の、最上位の概念として存在していることです。

この構造は、私がドラッカー塾で学んだことを基に、熟慮に熟慮を重ねて設計したものです。

では、この構造の違いは、単なる言葉遊びなのでしょうか?
それとも、そこには決定的な経営的意思が込められているのでしょうか?

この「嬉しい混乱」は、私に「なぜ、私たちはこの構造を選んだのか?」という本質的な問いを突き付けました。

その答えを見つけるため、私は改めて私たちの経営の師であるピーター・ドラッカーの思想に立ち返ることにしました。

ドラッカーは「使命」と「哲学」をどう考えたか? 企業の「目的」と「信念」の決定的な違い

経営学の父、ピーター・F・ドラッカー。
彼の経営思想の出発点は、常に「われわれの事業は何か?」という問いです。
彼は、この問いへの答えこそが「ミッション(使命)」であると定義しました。

ドラッカーは、「企業の目的と使命が十分に検討されていないことこそが、企業が挫折し失敗する最大の原因である」とまで断言しています。

「ミッション(使命)」とは、組織の「目的」そのものであり、その組織がなぜ存在するのか、社会において何を成し遂げようとするのか、という宣言です。

その観点で見れば、私たちの「使命」、すなわち「あらゆるものを繋ぎ、世のため・人のため・地域へ貢献する」というのは、ドラッカーの問う「ミッション(使命)」に対する完璧な答えです。これは、私たちが社会に対して果たすべき「機能」であり「目的」です。

では、「経営理念 (Philosophy)」は、ドラッカーの思想の中にどこに位置づけられるのでしょうか?

ここで非常に興味深いことがわかります。

第一に、経営理論の専門家たちによれば、優れたミッション・ステートメントが含むべき要素の一つとして、「Philosophy(哲学)」が挙げられています。ここでの「Philosophy」とは、「その企業の基本的な信念、価値観、願望、そして倫理的な優先順位は何か?」という問いへの答えを意味します。

第二に、ドラッカー自身の「マネジメント哲学」全体が、徹底して「人間中心」であったことです。
彼は、「マネジメントとは『人』に関わることである」と述べ、働く一人ひとりに責任感を持たせ、彼らをエンパワーメント(権限移譲)すること、そして人間の尊厳を尊重することこそがマネジメントの核であると説きました。

ここで、私たちが三協鋲螺で行ってきたことが明確になります。

世の中の多くの企業は、この「目的 (ミッション)」と「信念 (フィロソフィー)」を一つの「ミッション・ステートメント」の中に混在させています。

しかし私たちは、ドラッカーの思想を深く学び、この二つをあえて明確に「分離」し、そして「階層」をつけたのです。

  1. 私たちの「使命 (Shimei)」
    • = ドラッカーの言う「ミッション (Mission)」
    • = 私たちの「目的」であり「機能」。
  2. 私たちの「経営理念 (Rinen)」
    • = ドラッカーの言う「フィロソフィー (Philosophy)」
    • = 私たちの「基本的な信念・価値観」であり、ドラッカーの「人間中心のマネジメント哲学」そのものの実践。

私たちは、ドラッカーの思想の表層的な「ミッション」だけを採用したのではありません。
彼の思想の核である「人間中心の哲学」こそを、私たちの会社の「経営理念」として抜き出し、組織の最上位、つまり「使命」のさらに上流に置くことを決断したのです。

世界標準で見る「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の階層構造

実は、この「理念」と「使命」の定義に関する混乱は、日本特有のものではなく、世界中で議論されてきたテーマです。

そして、近年のグローバルな経営理論では、組織の「魂」を定義するフレームワークとして、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3点セット(MVV)がスタンダードとなっています。

この3つの定義を、ここで明確にしておきましょう。これもまた、驚くほど私たちの定義と一致するのです。

  • 1. ビジョン (Vision) = 未来
    • 組織が将来「何になりたいか」という願望、目指すべき未来像。
  • 2. ミッション (Mission) = 目的・行動
    • 組織が「なぜ存在するのか」。そのビジョンを達成するために「今、何を行うか」という目的であり、より具体的な行動。
  • 3. バリュー (Values) / フィロソフィー (Philosophy) = 信念・行動規範
    • 組織が「何を信じているか」。ミッションを遂行する上で、組織のメンバーが「どのように振る舞うべきか」という指針、道徳的な羅針盤、「行動規範(Code of Ethics)」。

さて、この世界標準の「MVV」モデルに、私たちの定義を当てはめてみましょう。

  • 世界標準の【ビジョン】
    • = 私たちの**【私たちの夢 (Yume / Vision)】**
    • (例:「日本一の『ねじ屋。』にします」「お客様に喜ばれる仕事…」「心の温かい会社…」)
  • 世界標準の【ミッション】
    • = 私たちの**【使命 (Shimei / Mission)】**
    • (例:「あらゆるものを繋ぎ 世のため・人のため・地域へ貢献する」)
  • 世界標準の【バリュー / フィロソフィー】
    • = 私たちの**【経営理念 (Rinen / Philosophy)】**
    • (例:「社員の幸せ」「お客様の幸せ」「会社の幸せ」これら3つの幸せ…)

そして、私たちの定義では、この「夢 (ビジョン)」は、「使命 (ミッション)」が実現した時の「姿」そのものとして定義されています。まず「あらゆるものを繋ぐ」という「使命」があり、その結果として「お客様に喜ばれる」という「夢 (ビジョン)」が実現される、という関係性です。

どうでしょうか。

同友会での学びから始まった「ズレ」や「混乱」は、ここで完全に解消されます。

私たちが「経営理念」と呼んでいるものは、世界標準でいう「フィロソフィー(哲学)」あるいは「バリュー(価値観)」そのものです。

そして、私たちが「使命」と呼ぶものは「ミッション」であり、「夢」と呼ぶものは「ビジョン」です。

私たちの経営定義は、奇をてらったものでも、特殊なものでもありません。

ドラッカーの思想と、グローバルスタンダードな経営理論(MVV)を、最も忠実かつ精密に、そして「三協鋲螺」という日本の会社の実践に落とし込んだ、経営の「教科書」だったのです。

同友会が「経営理念」という言葉を、ミッションやバリューを含む包括的な「経営指針」の総称として使っているのに対し、私たちはそれを「ミッション(使命)」と「フィロソフィー(理念)」に高解像度で「分離」している。ただ、それだけの違いだったのです。

私たちが「3つの幸せ」を「使命」の上位に置く、絶対的な理由

では、なぜ私たちは、わざわざ「理念(フィロソフィー)」を「使命(ミッション)」から分離し、さらにその「上位」に置いたのでしょうか。

これは単なる学術的な分類ではありません。

これこそが、三協鋲螺の経営における最も重要な「意思決定のルール」そのものだからです。

私たちの「使命」は、「あらゆるものを繋ぐ」ことです。

私たちの「理念」は、「3つの幸せ」が「一致する」ことです。

では、もしこの二つが相反する事態が起きたらどうなるか?

例えば、こういうシナリオです。

「お客様を繋ぎ(使命)、お客様に猛烈に喜ばれ(お客様の幸せ)、会社に莫大な利益がもたらされる(会社の幸せ)、しかし、それを実現するためには社員が心身をすり減らして疲弊し、倒れてしまう(社員の幸せの欠如)ような仕事」があったとします。

このとき、私たちはどうすべきか?

答えは明確です。

私たちは、その仕事を「受けない」ことを選びます。

なぜなら、私たちの最上位の憲法である「経営理念」が、「3つの幸せが『一致するような』経営を行う」と命じているからです。一つでも欠けてはならないのです。

私たちの「理念(Rinen)」は、私たちの「使命(Mission)」の実行を「統治(ガバナンス)」し、「制約(フィルター)」をかける、絶対的な上位概念なのです。

だからこそ、私たちの「経営理念」は、「社員の幸せ」から始まります。

だからこそ、私たちの経営の根幹には、「会社は社員とその家族を守ることを最優先に考える」という方針が据えられているのです。

この「理念(3つの幸せ)」は、単なるお題目ではありません。

私たちの経営全体が、この「理念」をいかにして「現実」にするか、そのための「システム(仕組み)」として設計されています。

  • 例えば、私たちが「ウェルビーイング(幸せに生きること)」を経営の前面に掲げるのも、
  • 利益や損得だけでなく「どれだけ人に喜ばれるか」という「尊徳の経営」を軸にするのも、
  • 日々の業務や学びの目的を「技術の習得」だけでなく「人間性を高めること」と定義するのも、

すべては、最上位にある「3つの幸せ」という経営理念を実現するために、その理念を体現できる「人」を育てるための、具体的な「戦術」に他なりません。

私たちの会社では、「使命」を果たした結果として「理念」がついてくるのではありません。

私たちが「理念」を生きるために、「使命」という手段が与えられているのです。

結論:「使命」は”何を為すか”、「経営理念」は”どう在るか”

同友会での「嬉しい混乱」から始まったこの思索の旅は、私に、私たちの会社の「魂」の形を、かつてないほどクリアに示してくれました。

「経営理念」と「使命」、どちらが重要か?

この問いに、今、私は明確に答えることができます。

  • 使命 (Shimei / Mission) = 私たちが「何を為すか (Doing)」
    • 私たちは「ねじ屋。」です。
    • 私たちはモノを、人を、未来を「つなぐ」。
    • これが私たちの社会における「機能」であり、「役割」です。
  • 経営理念 (Rinen / Philosophy) = 私たちが「どう在るか (Being)」
    • 私たちは「心の温かい会社」「心根の優しい人間の集団」です。
    • 私たちは「幸せ」、「ウェルビーイング」、「尊徳」を何よりも優先する集団です。
    • これが私たちの「存在」そのものであり、「アイデンティティ」です。

そして、三協鋲螺という会社が掲げる絶対的な答えは、

「私たちが『どう在るか (理念)』が、私たちが『何を為すか (使命)』を決定する」

ということです。

私たちの「在り方 (Being)」が、私たちの「やり方 (Doing)」を定義するのです。

これこそが、私たちが大切にする坂本龍馬の言葉、「世の人は我を何とも言わば言え 我が成すべきことは我のみぞ知る」の真意です。

彼が「成すべきこと(使命)」を知っていたのは、彼が「どう在るべきか(理念・哲学)」という揺るぎない自分を持っていたからです。

この「在り方 (理念)」と「為すこと (使命)」の統合こそが、私たちが今期、新たに掲げたタグライン**「つなぐ力で、人生と社会を豊かに」**という言葉に集約されています。

私たちが「つなぐ力 (使命)」を発揮するのは、まさしく「人生と社会を豊かに (理念)」するためです。

これはルールブックやマニュアルではなく、私たちの「魂の地図」そのものです。

「人間性を高める」という日々の実践を通じて、「幸せ」に基づいた会社がどれだけ強く、どれだけ社会に貢献できるかを、これからも証明してまいります。

今週も、読んでいただきありがとうございました。

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