キャップボルト完全ガイド:選定基準からサイズ選び、強度区分まで

今日はなんとなく実用的なコラムを投稿しようと思います。
キャップボルトってご存知でしょうか?非常に使いやすく便利なボルトです。
このキャップボルトについてのコラムです。

キャップボルトについて

キャップボルトは、頭部に六角形の穴が開いているボルトの一種です。この穴のおかげで、特別なレンチを使用して締めることができます。キャップボルトは、その形状から六角穴付きボルトとも呼ばれ、様々な産業分野で広く使用されています。キャップボルトは、その小さな頭部のために限られたスペースでも使用でき、強度も高いため、重要な機械部品の固定に非常に適しています​​。

キャップボルトの主な特徴は、異なるサイズと強度区分があることです。これらの強度区分は、ボルトの材質や熱処理によって異なり、その使用環境や目的に応じて選ばれます​​。

キャップボルトの強度区分とは

キャップボルトの強度区分は、ボルトの強度を示す重要な指標です。この区分は通常、ボルトの頭部に記載されており、2つの数字で表されます。例えば、「4.8」や「8.8」といった形式で示されます。これらの数字は、ボルトの引張り強度と降伏点の割合を表しています​​。

  • 引張り強度は、ボルトが切断されるまでの最大の強度を示します。
  • 降伏点の割合は、ボルトが永久的な変形を受ける前の最大強度の割合を意味します。

たとえば、強度区分「4.8」の場合、引張り強度は400N/mm²で、80%(320N/mm²)までは永久ひずみが発生しないことを意味します。一方、強度区分「8.8」では、引張り強度が800N/mm²で、その80%(640N/mm²)まで永久ひずみが発生しないとされています。

キャップボルトを選択する際には、これらの強度区分を理解していなければなりません。

現実の鋼製のキャップボルトは一般的な国産品の場合、M20以下は強度区分「12.9」でそれ以上は「10.9」になります。
電気メッキで表面処理を行うものはこの後にも書きますが、水素脆性を避けるために強度区分「10.9」に落としています。

キャップボルトの材質の重要性

キャップボルトの選定では、使用する材質も非常に重要です。ボルトの材質は、その耐久性、強度、耐腐食性などに大きく影響します。一般的に、キャップボルトは鋼鉄製が多く、特に高強度を必要とする用途では、合金鋼が使用されることもあります。また、腐食を防ぐためにステンレス鋼が選ばれることもあります。

例えば、一般的な鋼鉄製ボルトの強度区分は「3.6」、「4.6」、「4.8」、「5.6」、「5.8」、「6.8」、「8.8」、「9.8」、「10.9」、「12.9」というように様々です(あくまでも規格上)。これらは、ボルトが耐えられる最大の引張荷重に基づいています。また、ステンレス製ボルトには「A2-70」や「A4-80」といった強度区分があり、これらはステンレスの種類や強度を示しています​​​​。

特定のアプリケーションでは、特定の材質が要求されることがあります。例えば、高温環境や腐食性の高い環境では、特定の合金鋼やステンレス鋼を選択する必要があります。適切な材質を選択することで、ボルトの性能を最大限に発揮し、長期間にわたる信頼性を確保することができます。

キャップボルトのサイズの選び方

キャップボルトの選定において、適切なサイズを選ぶことは非常に重要です。サイズが小さすぎると、必要な強度を提供できず、サイズが大きすぎると、無駄にスペースを取ることになります。

サイズ選定の基本は、ボルトの直径と長さです。キャップボルトの直径は、「M3」、「M4」、「M5」といった形で表されます。これらの数字は、ミリメートル単位のメトリックサイズを示しており、ボルトの太さを表します。例えば、「M3」は直径が3ミリメートルのボルトです​​。

ボルトの長さも重要で、固定する部品の厚みや、ボルトが通る穴の深さに合わせて選ぶ必要があります。長さが短すぎると、しっかりと固定できず、長すぎると突出してしまい、見た目が悪くなることもあります。

また、キャップボルトの頭部の形状や大きさも考慮する必要があります。頭部のサイズが大きいほど、より大きなトルクで締めることができますが、同時にスペースをより多く必要とします。

サイズ選定の際には、具体的な用途や固定する部品の仕様をしっかりと考慮し、最適なサイズを選択することが重要です。

キャップボルトの締め付けトルク

キャップボルトを使用する際、正しい締め付けトルクを適用することは非常に重要です。締め付けトルクとは、ボルトを締める際に適用する力のことで、これが不適切だとボルトの固定が不十分になったり、逆に過剰に締め付けてボルトや固定対象を損傷する原因となることがあります。

一般的に、キャップボルトの締め付けトルクは、ボルトのサイズや強度区分、使用する材質によって異なります。また、締め付ける部品の材質や形状によっても変わることがあります。たとえば、金属に締め付ける場合とプラスチックに締め付ける場合では、必要なトルクが異なります。

トルクの設定には、ボルトの降伏点の60~70%が一般的な締め付けトルクとされています。これは、ボルトが耐えられる最大の力の60~70%の力で締めることを意味しています​​。

締め付けトルクが適切でないと、ボルトがゆるんだり、疲労破壊や遅れ破壊などのトラブルが発生する可能性があります。疲労破壊は、締め付け後にボルトが繰り返し変動荷重を受けているうちに微細な亀裂が発生し、最終的に破断する現象です。遅れ破壊は、一定の引張荷重が加わっている状態で一定時間経過した後に突然破壊する現象です​​。

正しい締め付けトルクを適用することで、キャップボルトの性能を最大限に活かし、安全かつ効果的な固定を実現することができます。

キャップボルトの表面処理

キャップボルトは、その用途や環境に応じて、さまざまな表面処理が施されることがあります。表面処理は、ボルトの耐腐食性、耐摩耗性、または見た目を改善する目的で行われます。

一般的な表面処理方法には、以下のようなものがあります:

  1. 電気亜鉛メッキ:最も一般的な表面処理の一つで、良好な耐腐食性を提供します。
  2. ニッケルメッキ:耐腐食性と装飾的な外観を提供します。
  3. クロムメッキ:美観と耐腐食性の両方を向上させます。

特に高強度のキャップボルト、例えば強度区分「12.9」のボルトでは、水素脆性を防ぐために電気メッキ処理を避けるます。水素脆性は、水素が金属内部に侵入し、その強度や靭性を低下させる現象です。このため、これらのボルトには別の種類の表面処理が適用されることがあります​​。このため、キャップボルトでは強度区分「10.9」を使用して電気メッキ処理を行います。

表面処理は、ボルトが使用される環境によって異なるため、特定のアプリケーションに最適な表面処理を選択することが重要です。例えば、海洋環境や化学薬品が存在する環境では、より高い耐腐食性を提供する表面処理が必要となることがあります。

キャップボルト選定時の注意点とまとめ

キャップボルトを選定する際には、いくつかの重要な点に注意する必要があります。

  1. 用途の理解:ボルトを使用する具体的な用途を理解し、それに適した強度区分、サイズ、材質を選ぶことが重要です。
  2. 環境の考慮:ボルトが使用される環境(温度、湿度、腐食性の可能性など)を考慮し、適切な表面処理を選定します。
  3. 安全率の確保:ボルトの強度は、必要とされる最大荷重よりも常に高く設定し、安全率を確保することが重要です。
  4. 締め付けトルクの適正化:正確な締め付けトルクを適用することで、ボルトの緩みや破損を防ぎます。
  5. 定期的な点検:締め付けトルクのチェックや、腐食や損傷の有無を定期的に点検することで、ボルトの安全性と信頼性を保ちます。

まとめとして、キャップボルトの選定は、単にサイズや強度だけでなく、用途、環境、材質、表面処理、締め付けトルクなど、多方面からの検討が必要です。適切なボルトを選択することで機械や構造物の安全性と機能性を最大限に引き出し、長期間の信頼性を確保できます​​​​​​​。

現実的に規格上は存在しても生産されていないものも多数あります。
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